2008年12月2日火曜日

経験と計量

東泉一郎さんと言えば著名なアートディレクター。彼の活動は多岐にわたっていますが、蕎麦も打つとのことで、自宅近所の友人宅で彼と蕎麦対決をすることに。東泉さんは東急ハンズで買った初級セットを持参して友人宅で実演で打つと聞き、僕は事前に自宅で打っていくことにしました。対決前に「東急ハンズの初級セット」というフレーズを聞いてひとまず安堵です。
ところが当日、
彼から道具を説明してもらうと、ほぼ全て玄人用らしきものに入れ替わっていることが判明。最初に買ったものが「東急ハンズの初級セット」で、時間をかけて少しずつ、使いやすい道具へ変更してきたとのこと。やや不安を感じつつもさらに話を伺うと「神田やぶそば」「神田まつや」と個人的に交流があるそうで「いやいや近所だったので。」とご謙遜。東泉さんはご実家が神田だったそうで、そういう機会があったのです。今しか告白のタイミングはないと思いました。「僕の経験はアフター5の蕎麦打ち体験1回コースです。」所は銀座の雑居ビル内にある蕎麦スクールにて。
それでも意外と自信があります。そのスクール曰く、蕎麦は計量さえ厳密(例. 水1gの誤差は不可)にすれば必ず美味しく打てる!とのこと。その話はとても興味深いです。蕎麦に関しては、成果と経験は関係がないと言っているわけですから。
事実そうなのです。ただ一定の細さで切るのが難しく、そこが本職との違いであり、経験が必要と聞きました。実際、体験1回コースが拠り所でも、自分の蕎麦よりも美味しい蕎麦には滅多に出会いません。ただ見栄えと口に入れたときの感覚が違いますが、たいていは食べ心地の違いという程度です。蕎麦屋で驚くようなことはごく稀です。
東泉さんはもちろん計量について教わったことはなく、すべて経験と勘によるそうです。当然に東泉さんの打ってくれた蕎麦はとても美味しかった。そして多分、結果的に正確な計量と同じ割合になっているのだと想像できます。僕の蕎麦も友人達は美味しいと言ってくれました。なので蕎麦対決は引き分け、というか二人とも最初から対決しているつもりがなく、お互いに謙遜しまくりの、むしろ褒め合い対決でした(笑)。でも完全に異なる点がありました。打っているプロセスです。例えば、蕎麦を打つ過程では円錐形にまとめる段階があるのですが、東泉さんのはその形と表面が美しかった。やはりモノを作って行く時にはそういうところが魅力に見えますね。プロセスの見た目が結果としての味と関係あるのか不明ですが、ぜひ影響していて欲しいと思いました。デザインでは、たぶんそうなっている気がします。